駐在家庭の子どもが抱えるストレスと親ができること
海外駐在は親にとって大きな挑戦ですが、子どもにとっても多くのストレス要因が伴います。特に、言語の壁、学校への適応、文化の違い、交友関係の悩みなどが子どもに影響を与えることがあります。ここでは、UK駐在時の長男の経験をもとに、親ができるサポートについて考えてみました。なお、彼は帰任後、赴任経験を活かして大学へ進学し、現在は社会人として活躍しています。
駐在先の子どもが直面する主なストレス要因
言語の壁
新しい国では現地の言葉での生活が求められます。最初は授業の内容を理解することや、友達とスムーズに会話することが難しく、学校生活において孤独感を抱えることも少なくありません。特に、日本の教育とは異なり、授業で積極的に発言することが求められるため、心理的な負担が高まります。
学校への適応
教育システムが日本と異なるため、日本の小学校の途中から現地校へ入学した場合、戸惑うことも多いでしょう。例えば、日本では当たり前の九九がなかったり、世界地図が欧州中心で日本の位置が目立たなかったりするなど、慣れ親しんだ環境との違いに驚くこともあります。また、授業で人前で話す機会が多いことも、子どもにとっては負担になることがあります。
文化の違い
食文化や生活習慣の違いもストレスの一因です。例えば、食事では箸ではなくフォークとナイフが一般的になります。また、学校のイベントでお弁当に「おにぎり」を持たせたところ、現地の友達から「WHAT’S THIS?」と注目を浴び、質問攻めにあったこともありました。「海苔」が珍しかったようです。
交友関係の悩み
言語や文化の違いから、友達を作ることに苦労することがあります。日本の学校のように自然に友達ができるとは限らず、現地の子どもとの接し方に戸惑うこともあります。また、日本人コミュニティ内での人間関係に悩むケースもあります。
親ができる具体的なサポート方法
1. 味方になって見守る
子どもがストレスを感じているとき、親が安心できる存在であることが何より重要です。
見守りの具体例
- 過干渉にならず、子どもの気持ちに寄り添う。
- 子どもが話したくなったときには、パソコンやスマホを見ながらではなく、しっかり向き合い耳を傾ける。
- 毎日「学校どうだった?」と聞きたくなるが、過度な質問はプレッシャーになるため、リラックスできる時間を作る。例えば、おやつを一緒に食べながら親が日常の出来事を話し始めると、子どもも自然と学校のことを話してくれることがある。
トラブル時のサポート
長男がイギリスのプライマリースクールで他の生徒に嫌がらせを受け、英語で言いたいことが言えずに先生に怒られた経験がありました。結果的に居場所をなくし、別の教室に隠れ、警察が捜索する事態にまで発展しました。
このとき、親がじっくり話を聞いた上で、先生に事情を説明したところ、先生が加害生徒を呼び出し、事実確認のうえ、息子に謝罪してもらうことができました。公正さを重視する英国の教育方針に感動するとともに、親が冷静に対応することの重要性を再認識しました。
2. 学校行事への積極的な参加
学校行事に参加することで、子どもの安心感が増し、現地の環境に適応しやすくなります。
具体的な関わり方
- PTAや学校イベントへの参加:運動会や文化祭に顔を出し、先生や他の保護者と関係を築く。
- 誕生会を現地のやり方で開催:クラスメートとの距離が縮まり、交友関係が広がるきっかけに。
親自身のメンタルケアの重要性
親が不安定だと、子どももその影響を受けやすくなります。海外生活では親自身も環境の変化に適応しなければならず、ストレスを感じる場面が多いものです。自分の心の余裕を保つことが、結果的に子どもへのより良いサポートにつながります。
1. 日本人コミュニティにこだわりすぎない
日本人駐在家庭とのつながりは心強いですが、比較やプレッシャーを感じることもあります。「あの家庭はうまくやっているのに…」と焦るよりも、自分と家族に合ったペースで生活を楽しむことを大切にしましょう。
2. 「完璧な親」を目指さない
子どもが学校に適応できていないと、「私のサポートが足りないのでは?」と自分を責めがちですが、すべてを完璧にこなすことは不可能です。「できる範囲で頑張ればOK」と考えることで気持ちが楽になります。
3. 「一人の時間」を意識的に作る
海外では子どものサポートに集中しすぎてしまいがちですが、親自身もリフレッシュが必要です。
- カフェで一息つく
- 趣味を楽しむ(読書、料理、手芸、語学学習など)
- 一人で散歩する
4. 夫婦で協力し合う
- 夫婦で「お互いの悩みを共有する時間」を持つ
- 休日はできるだけ家族で出かける
5. 周囲に頼ることをためらわない
時にはカウンセリングを利用するのも一つの方法です。親が精神的に安定していることで、子どもにもポジティブな影響を与えられます。
まとめ
駐在家庭の子どもは多くのストレスを抱えますが、親が「見守る姿勢」と「学校行事への参加」を意識することで、安心感を与えることができます。焦らず、子どものペースに寄り添いながら、海外生活を楽しむ姿勢を持ちましょう。